カスタードたい焼きを買いたくない
私はカスタードたい焼きを買いたくない。
それはもうとても買いたくない。
別にカスタード味が嫌いなわけではない。
めっちゃ美味しいから、正直週3で食べたい。
でも、「カスタードたい焼きを買うタイプの人」と思われたくないので買いたくない。
なぜカスタードたい焼きを買うタイプの人と思われたくないのかというと、カスタードは新参者感があるからである。
伝わるかどうかはわからないが、カスタードには、和菓子というフィールドで幅を利かせている大御所アンコを、遠くのビルから撃ち殺さんとするスナイパー的な雰囲気がある。
つまり、和の国進軍の為、黒船で来航してきたポルトガル人なのである。
ここで、私は生粋の日本人だ。
いかなる場合においても、懐に刀を携え、国の文化を守らねばならない。
アンコ天皇を日本人としての誇りを胸にお守りするべく、海外からのカスタード使者を簡単に認めるわけにはいかないのだ。
しかし、カスタードは新参者であることとその美味しさを武器として、まるでキリストのように日本の文化に腰を据え始めた。
かくいう私もその美味に心を打たれ、虜にされてしまった1人である。
しかし、虜にされてしまった事実を大衆に晒して生きるほど、私はプライドを捨ててはいない。
美味に屈しつつも、自分の意思で購入することは避けることで、日本人としての誇りとプライドを、ギリギリのところで保っているのだ。
その姿はさながら、キリストを信仰しながらも、踏み絵に関しては着実にクリアしていく、隠れキリシタンである。
自分の目の前でカスタードたい焼きを買う人がいると、
「あっ、この人カスタードたい焼き買うタイプの人なんだな」
と思ってしまうし、そこから
「誇りのない奴め」とか
「きっと、斜め上を狙う鋭角なボケとかを繰り出してくる、"オレって新しいものにも寛容で新世界を探求するのが好きな冒険家タイプなんだよね"とか、素で言っちゃうような人なんだろうな」
とか、考察してしまう。
私は他人にそう思われたくない。
定石であるアンコを購入し、「堅実で安定感のある真面目な人」的なイメージを根こそぎ得たい。
たい焼き=アンコ
店のおじさんと喧嘩して海に逃げ込んだたいやきくんは、お腹のアンコが重かったはずだ。
お腹のアンコなのだ。
でも、正直言ってカスタードのたい焼きはめちゃくちゃ美味い。
それはもう美味い。
なのでこの記事ではいったい何が言いたかったのかというと、みんな私にカスタードたい焼きを買ってきて欲しい、ってことだ。
私は武士なので自ら購入することはできない。
しかし、食べたいのである。週3で。
だから、頼む。
買ってきてくれ、お願い。